弁護士は費用が高そうに思うのですが、本当なんでしょうか?
 
弁護士よりは司法書士や行政書士のほうが相談しやすい。このような声を耳にしますがそれでいいのでしょうか?
 
弁護士は敷居が高いの?
 
義理に付け込まれて契約をしてしまったが取りやめにする方法はありませんか?
 
クーリング・オフができる取引分野を教えてください。
 
事業者から事実と異なることを告げられその言葉を信じて契約したが、契約を取消せますか?
 
事業者から不確実なことを自信ありげに断定的に言いきられたため、その言葉を信じて契約したが、契約を取消せますか?
 
「不実告知」や「断定的判断の提供」以外で契約を取消せる場合がありますか?
 
今親が入院しており、医者から覚悟しておいて欲しいと言われています。どのようなことに気を付けたらよいでしょうか?
 
遺言書があるのですが、どのようにしたらよいでしょうか?
 
遺言書はなかったのですが、相続の手続きとしてどのようにしたらよいでしょうか?
 
交通事故の被害者になりましたが、何か気を付けることはありませんか?
 
交通事故を起こした人の責任について教えてください。
 
交通事故を起こした人に民事上の損害賠償請求をしたいのですが、どのような損害の賠償を求めることができますか?
 
私には痴呆の叔母がいるのですが、成年後見制度を利用したらよいと教えてもらいました。どんな制度か教えてください。
 
自分が信頼している弁護士さんに、私が痴呆になった後財産管理を任せる方法はありますか?
また、もっと前の私の能力のある今のうちから信頼する弁護士さんに財産管理を任せる方法はありますか?
 
複数のサラ金やクレジット会社から多額の借金をしております。
最近その返済が滞っており、請求の電話に怯える毎日です。楽になる方法を教えてください。
 
多重債務で且つ収入から見て支払って行けないと思うのですが、何か方法はあるでしょうか?
【弁護士は費用が高そうに思うのですが、本当なんでしょうか?】
弁護士費用については、昔は弁護士間の統一基準がありましたが、今は廃止されました。廃止となったのは統一基準の内容が良くないからではなく、独禁法の競争原理に反するからです。弁護士業と隣接の司法書士や税理士などの士業は皆同じく報酬統一基準廃止になりました。
でも基準がないと不安なことはよくわかります。
そこで私は、廃止になった大阪弁護士会の旧統一基準である「大阪弁護士会報酬規程」をそのまま私の法律事務所の報酬規程として使用しています。
旧基準は内容が良くなくて廃止になったのではなく、過去に何度も改訂をくわえて適正な内容になるように改正されたものです。
私は適正な基準だと思っていますし、大阪弁護士会は現在でも参考基準という形で示しています。
   
 
【弁護士よりは司法書士や行政書士のほうが相談しやすい。このような声を耳にしますがそれでいいのでしょうか?】
弁護士は法律事務全般を扱うことができるので、広い範囲の相談ができます。
弁護士業と隣接する士業(さむらい業)の業務範囲について説明します。
隣接士業には例えば社会保険労務士、不動産鑑定士等多くの種類の士業がありますが、ここでは司法書士と行政書士に絞って説明します。
弁護士は法律事務全般を扱うことができます。弁護士でないものが報酬を得る目的で業として法律事務を扱うと、法律で別途定めがない限り、非弁護士の法律事務取扱禁止(弁護士法72条)に反することになり2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられます(同法77条)。
法律で別途定めるとされているのは司法書士や行政書士など士業ですが、その方達が行える法律事務の内容(職務範囲)はその専門分野ごとに限られており、弁護士のように法律事務全般を扱うことができるわけではありません。
司法書士は、本来登記申請と裁判所や検察庁に提出する書類の作成が主な職務範囲です。法律相談もこのような申請代理と文書作成に関する相談に限られます。
ところで、認定司法書士と言う制度があります。一定の資格を備えて認定を受けた司法書士は、140万円を超えない範囲内で簡易裁判所の民事訴訟手続きについての代理や法律相談ができますが、140万円の厳しい制限があるので極めて限られた範囲の法律相談しかできません。
行政書士は、官公署に提出する書類の作成が基本です。書類作成業務に伴う相談業務でも法的に判断するとか評価することはできません。したがって、極めて限られた範囲の相談しかできないのです。にもかかわらず交通事故や離婚の法律相談などの看板をあげているの見かけますが、実際にそのような法律相談を行っているのであれば、非弁護士の法律事務取扱禁止違反の疑いがあります。
   
【弁護士は敷居が高いの?】
最近まで弁護士は宣伝を禁じられていたので、知った人からの紹介事件しか扱ってきませんでした。このようなシステムをとってきたことから、市民が広く弁護士を知る機会がなかったために、弁護士は敷居が高いと言われるのだと思います。
しかし時代は変わり、弁護士も宣伝することができるようになりました。皆さんもテレビコマーシャルや地下鉄の広告などで弁護士の宣伝を目にされると思います。これらの弁護士は宣伝の最先端を言っている弁護士です。
しかし年配の私は、できるだけ皆さんとお近づきになりたいと思いながらも、そのような宣伝は品位を欠くように思えて踏み切れません。長ーい間品位を欠くと言われ続けてきましたので、急には転身できないのです。けっして偉そうにしているわけでもなく、敷居を高くしているわけでもないのですが。
皆さんとお近づきになれる具体的な手段や方策が見つからず、仕方なく従来通り紹介で皆さんが私のことを知ってくださるのを待っているのです。このホームページを作ったのも、皆さんが私のことを知ってくださるきっかけを作りたいと考ええたからで、ささやかな具体策のつもりです。
   
【義理に付け込まれて契約をしてしまったが取りやめにする方法はありませんか?】
義理やしつこさに負けて不本意な契約に署名する事件が後を絶ちません。そのような際の助け舟として大きな効果があるのが「クーリング・オフ」の制度です。
一旦契約を結んでしまうと、法律で決められた解除原因があるか、約束で決めた解除理由がない限り契約は解除できないのが原則です。
しかし、クーリング・オフ制度といって要件を満たせば無条件に解除できる制度があります。
不本意な契約を結んでしまったら、条件を満たしているかなどと考えずに、取り合えずできるだけ早い段階に自分で、「クーリング・オフにより契約を解除します」という内容の葉書を出しましょう。葉書で十分ですが、葉書の裏表をコピーにとって証拠を残し、簡易書留または配達記録郵便で郵送するのが大事です。
のちにクーリング・オフができる条件を客観的には満たしていなかったという場合があるかもしれませんが、ダメでもともとです。迷わず、悩まず、取り合えず、早急に通知しましょう。そのあとの処理ですが、弁護士にまかすのがベストだと思います。
   
【クーリング・オフができる取引分野を教えてください。】
訪問販売、電話勧誘販売、特定継続的役務提供、連鎖取引販売、業務提供誘引販売取引、店舗外の割賦販売等、店舗外の宅地建物取引、保険契約、ゴルフ会員権、現物まがいの預託取引、商品投資、不動産特定共同事業、小口債権販売、投資顧問、海外先物などの取引分野でクーリング・オフができます。
クーリング・オフができる期間は、業者とあなたとの間の契約書面を受け取ってから、(但しその契約書にきちっと記載がなされていることが必要です。
その要件を満たしていなければ、満たした契約書面を受け取ってからクーリング・オフが進行します。)8日間(これが多い)から20日間とさまざまです。
個別具体的な事件に遭遇した場合は、早急に自分でクーリング・オフの通知をしたあと、弁護士にまかすのがベストだと思います。
   
【事業者から事実と異なることを告げられその言葉を信じて契約したが、契約を取消せますか?】
事業者と消費者間で結ぶ契約を消費者契約と言います。この消費者契約に適用される法律に消費者契約法があります。
消費者契約法の4条1項1号の「不実告知」の要件を満たしている場合は契約を取り消せます。
「不実告知」とは、事実と異なることを告げること、即ち消費者に告げた内容が客観的に真実でないことをいいます。
取り消せるには、契約をするかどうかの判断材料として重要な事実(重要事項)についての「不実告知」があることが必要です。
取り消せるのは、消費者が誤信したことに気づいた時から6カ月まで、または誤信に気づかないままに契約締結から5年を経過するまで、取り消せます(取消権の時効の問題です)。
私が扱ったケースですが、キャリーバックを買いに店に行ったところ、バーゲンセール中で、商札の3万5000円と2万5200円の値段の両方に赤インクで×が書いてあり、更に50%オフと書いてありました。最初の値段3万5000円がメーカー小売希望価格で、それがバーゲン価格1万2600円に値引きになっていると誤信して購入し、家に帰ってネットで調べてみると、どこでも通常価格消費税込み1万0500円で売りに出ていました。
私はある方法で証拠を作ったうえで、店主に消費者契約法4条1項1号の「不実告知」に当たるので昨日の契約を取り消します。証拠もあります。
本来ならバッグと代金1万2600円が引き換えになりますが、和解案として通常価格より高い部分2100円を返してもらうだけで解決しましょう。
だめであれば裁判に持ち込むだけでなく公正取引委員会に不当表示があったと通告しますよと伝えて、私の和解案通りの解決に持ち込みました。

具体的事例に遭遇した場合は弁護士に相談するのがベストだと思います。
   
【事業者から不確実なことを自信ありげに断定的に言いきられたため、その言葉を信じて契約したが、契約を取消せますか?】
事業者と消費者間で結ぶ契約を消費者契約と言います。この消費者契約に適用される法律に消費者契約法があります。
消費者契約法の4条1項2号の「断定的判断の提供」の要件を満たしている場合は契約を取り消せます。
事業者が、将来不確実な事項について確実であるかのように決めつけた判断を提供して勧誘する場合、消費者は持っている情報や交渉力に劣るのでその言葉を信じ判断を誤りやすいところから、取消ができることにしたものです。たとえば投資信託や土地の取引において、利益を生むことが確実でないのに「将来必ず利益が得られる」などと言う場合などです。
取り消せるのは、消費者が誤信したことに気づいた時から6カ月まで、または誤信に気づかないままに契約締結から5年を経過するまで、取り消せます(取消権の時効の問題です)。

具体的事例に遭遇した場合は弁護士に相談するのがベストだと思います。
   
【「不実告知」や「断定的判断の提供」以外で契約を取消せる場合がありますか?】
事業者と消費者間で結ぶ契約を消費者契約と言います。この消費者契約に適用される法律に消費者契約法があります。
消費者契約法の4条2項の「不利益事実の不告知」の要件を満たしている場合は契約を取り消せます。重要事項について、事業者が消費者に有利な事実を告げた場合に、それに関連する消費者に不利な事実を故意に告げない場合などです。
例として業者がリゾートマンションの景観の良さを宣伝しながら、実は数ヵ月後にその景観を台無しにするようなマンション計画があることを知って、故意にその事実を告げずにマンションの購入を勧める場合などです。その他、事業者が消費者の家などに居て契約の勧誘をしているときに、事業者に帰って欲しいと言うなどその意思を表しているにもかかわらず帰らなくて、困ってしまって契約を結んでしまった場合、また消費者が業者の店に居て勧誘を受けているとき、帰りたくなって帰りたいと言うなどその意思を表しているにもかかわらず帰してくれなくて、困ってしまって契約を結んでしまった場合、取り消せます。前者が消費者契約法4条3項1号、後者が消費者契約法4条3項2号の問題です。
   
【今親が入院しており、医者から覚悟しておいて欲しいと言われています。どのようなことに気を付けたらよいでしょうか?】
1. <亡くなる前>
病院代などの費用の確保が必要ですし、亡くなれば葬式代やお通夜の費用などがいります。事前に親と話し合った上で銀行のカードを預かり暗証番号を教えてもらってそれらの費用を引き出せるようにしておきましょう。
2. <亡くなった後の相続について>
亡くなった場合の相続の話ですが、プラスの財産だけでなくマイナス財産つまり親の債務も相続します。
@ <債務過多・相続放棄>
親の債務がプラス財産より多いことがはっきりしていれば、相続すれば債務が超過となっている分損を受けますので、相続放棄という手続きをお勧めします。
相続放棄をすれば債務だけでなくプラス財産も放棄することになります。
相続放棄をする場合は、自分のために相続があったことを知ってから(普通の場合は死亡の事実を知ったときからです。)3ヵ月以内に、相続開始地を管轄する家庭裁判所に申立てます。調査に手間取るような場合3ヵ月は短いので伸長の請求ができます。
相続放棄をした後でも亡親の財産を使うなどした場合(たとえば親が亡くなったあとで亡親のタンス預金などを使うなどしたら)は、相続を単純承認したことになり放棄が無効になります。気を付けて。
A <限定承認>
親の債務がプラス財産より多いかどうかはっきりしない場合、限定承認即ちプラス財産の範囲で債務を引き受けるという相続の方法もありますが、実務ではあまり利用されていませんので、説明を省略します。
B <相続する場合・相続税の申告>
特に上記のような手続きを取らないと、相続を承認したことになります。
相続した場合は相続税の申告が必要か否かが問題となります。相続税の申告が必要かどうかの判断をするには、現行は、基礎控除5000万円+相続人1人1000万円×相続人の数(近々改正予定です。改正後は基礎控除3000万円+相続人1人600万円×相続人の数)を超える遺産がある場合は必要です。
相続税の申告は10ヵ月以内に。越えない場合は申告の必要はありません。微妙なときは税理士に相談してください。
   
【遺言書があるのですが、どのようにしたらよいでしょうか?】
<相続する場合で遺言書がある場合>
@ 遺言書があるか調べてください。
遺言書には主なものとして、自筆証書遺言(遺言者が自分で内容の全文、日付、指名を手書きし印を押したもの。)と公正証書遺言(公証人役場の公証人が作成したもの。)があります。
 自筆証書遺言を発見した場合は、相続開始地を管轄する家庭裁判所に「検認の申立」を行う必要があります。家庭裁判所で開封しましょう。
内容を知りたいところですが、遺言書を勝手に開けたら無効になることがあります。
 公正証書遺言があるかどうかを調べるには、最寄りの公証人役場に行って利害関係人であることを証明すれば、あるのか、あるとしてどこの公証人役場にあるのかをパソコンで調べてくれます。
A 遺言の内容を実行するには。
内容によって、遺言執行者による執行が必要な事項と、必要でない事項、遺言執行者でも相続人でもいずれが執行してもよい事項の3つがあります。
遺言書に遺言執行者の指定がある場合はその人が執行を行います。指定がない場合で、遺言執行者の執行が必要な事項や、遺言執行者と相続人のいずれが執行してもよい事項であるが相続人が執行しようとしても他の相続人の協力が期待できない場合は、家庭裁判所に選任の申立を行うことになります。
選任申立が必要な場合は弁護士に相談するのがベストだと思います。
B 遺言書の内容が相続人の遺留分を侵害しているとき。
遺留分侵害とは、遺言者は自分の遺産を自由に処分できるのが原則ですが、相続人の利益のために侵害してはならない相続分を民法で定めています。
それを遺留分と言います。兄弟姉妹には遺留分はありません。
その余の相続人の遺留分割合は、妻や子供は遺産の半分、直系尊属だけの場合は遺産の3分の1です。
遺留分権を行使するには、権利者は侵害者に対し、相続と遺留分侵害を知ったときから1年内に減殺請求権を行使する旨の通知をする必要があります。
1年内にしなければ時効によって消滅してしまいます。しかし1年内に減殺請求権を行使しておきさえすれば、その後10年内であれば裁判を起こせます。
遺留分権を行使しなければならない場合は、弁護士に相談するのがベストだと思います。
   
【遺言書はなかったのですが、相続の手続きとしてどのようにしたらよいでしょうか?】
<相続する場合で遺言書がない場合>
相続人間で遺産分割の協議をすることになります。しかし争いが起こって当事者間では話し合いがまとまらない場合も多いように思います。
そのような場合は、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立て、それでも話し合いがつかなければ審判に移行して審判官に決めてもらうことになります。
通常弁護は調停の段階で就く場合が多いようですが、争いが起こるようなら早い段階で弁護士に相談するのがベストだと思います。
   
【交通事故の被害者になりましたが、何か気を付けることはありませんか?】
早い段階から弁護士に法律相談をすることをお勧めします。早い段階で頼むのも、示談間近で頼むのも、弁護士費用の額に差はないのですから。
早い段階からアドバイスを受けていると失敗しないですむ例を挙げてみます。

・被害者にも過失割合がある場合、自由診療で治療せずに健康保険を使って医療費を低く抑えるべきです。そうしないと、被った損害の補償が自由診療の治療費に回ってしまいます。
・また、交通事故による休業損害を請求する場合や、むちうち症でリハビリのためマッサージに通う場合、医師による休業の必要があるとか、働けるにしても従前の労働ができるようになるのはいついつとか、リハビリのためのマッサージが必要な期間とかの記載のある診断書がないと、保険の支払いがされないとか補償が認められないということになる可能性がある等々です。

交通事故の被害者には示談屋が寄って来ると聞きます。そして示談屋に示談を任せると、法的知識の不足から正当な額の補償が受けられないとか、弁護士に頼む以上の報酬額を取られるとかを耳にします。
   
【交通事故を起こした人の責任について教えてください。】
交通事故を起こした人は、行政上の責任(点数制)、刑事上の責任のほか、民事上の責任を負います。
民事上の責任とは、交通事故の加害運転者は、被害者に対し、故意又は過失基づく不法行為損害賠償責任を負うことになります。
被害者は、加害運転者だけでなく、加害者を雇っている使用者や、事故を起こした自動車の運行供用者がいるときは、運転者と共にそれらの者に対しても責任を問えます。
運行供用者とは、自分のために自動車を運行の用に供する者、例えば自動車を他人に貸した者、従業員が会社の車を無断で運転した場合の会社、レンタカーの貸主、持主は子供でも維持費は親が負担している場合の親などです。
   
【交通事故を起こした人に民事上の損害賠償請求をしたいのですが、どのような損害の賠償を求めることができますか?】
1 人身事故の場合
@ 傷害事故の場合
ア 積極損害 治療費・入院費、入退院・通院交通費、入院雑費、付添看護料
イ 消極損害 休業損害、後遺障害逸失利益
ウ 慰謝料  入通院慰謝料、後遺障害慰謝料A 死亡事故の場合
ア 積極損害 葬儀費等
イ 消極損害 逸失利益
ウ 慰謝料 2 物損事故
@ 修理不能(全損)の場合  事故時の交換価格
A 修理可能(一部破損)の場合 修繕費、車によっては評価損
B 代車使用料
C 休車補償 その車がないことによる収入減少の補償。代車使用料が認めら れる場合は、休車補償は認められません。
   
【私には痴呆の叔母がいるのですが、成年後見制度を利用したらよいと教えてもらいました。どんな制度か教えてください。】
判断能力が低下すると、介護保険契約や支援制度のサービス・施設利用契約ができなかったり、言葉巧みに勧められて不必要なものを買わされたりすることがあります。
法定成年後見制度は、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者など、精神上の障害によって判断能力が十分でない人を保護するために、家庭裁判所に援助者を付けてもらうことを目的とした制度です。
判断能力が不十分な程度の重い方から順に、成年後見人、保佐人、補助人が付けられます。その類型によって権限を行使できる範囲が異なります。
成年後見は、判断能力が全くないと思われる者(事理を弁識する能力を欠く常況にある者)のための制度です。
保佐は、判断能力が特に不十分と思われる者(事理を弁識する能力が著しく不十分な者)のための制度です。
補助は、判断能力が不十分と思われる者(事理を弁識する能力が不十分な者)のための制度です。

ここでは、成年後見人について説明します。
成年後見人は、本人(成年被後見人)がその人らしい生活をおくれるように、その人の収入や資産を本人の生活の充実のために活用し(財産管理)、本人の生活全般について責任を持った判断を行います(身上監護)。
成年後見人は、この両面を全うするために、法的に代理、同意、取消を行うことによって本人を法的に保護します。
他方、成年後見人は、このような後見事務を行うに当たっては、本人が現在有している能力をできるだけ活用し、本人の意向を十分に尊重して本人が自分で決定したことを尊重するように心がけることになっています。
本人は、成年後見人が付けられたあとでも、食料品や衣料品といった日用品の購入等の日常生活に必要な範囲の行為はできます。ただ選挙権はなくなりますし、戸籍には記載されませんが登記(東京法務局)されます。選任は、本人や一定の親族、市町村長等の申立によって家庭裁判所が行いますが、家庭裁判所はいろんな事情を考慮して最も適切と思う人を選任しますので、申立の際に推薦した候補者が必ずしも選任されるとは限りません。親族以外の弁護士、司法書士、社会福祉士等が選任されることもあります。
   
【自分が信頼している弁護士さんに、私が痴呆になった後財産管理を任せる方法はありますか?また、もっと前の私の能力のある今のうちから信頼する弁護士さんに財産管理を任せる方法はありますか?】
法定後見制度では本人が法定後見人を選べません。
しかし自分が信頼する弁護士に自分の能力が減退した時点で後見人になって貰える方法があります。
それは任意後見契約を公正証書によってあらかじめ結んでおくのです。
その後本人の能力が減退した時点で、家庭裁判所に申立をなし、任意後見監督人を選任して貰って、任意後見契約の効力が生じます。
任意後見監督人を選任してもらうのは本人が契約した任意後見人を監督して貰うためです。
この任意後見制度が効力を発するのは、本人の能力が減退してからですが、能力が減退する前でも弁護士に財産を管理して貰うことができます。
本人に能力がありますので、その弁護士さんとの間で財産管理契約を結ぶ方法です。 
本人に能力がある段階では財産管理契約の効果として、減退した後は任意後見の効果として、一貫して財産管理を依頼することができます。
   
【複数のサラ金やクレジット会社から多額の借金をしております。最近その返済が滞っており、請求の電話に怯える毎日です。楽になる方法を教えてください。】
複数の金融業者から多額の借金をして、返済が不能または著しく困難になった人を多重債務者と言います。
多重債務者の救済方法としては、任意整理と自己破産の申立および個人再生の申立の方法があります。
任意整理か自己破産の申立か、その選択の目安は、過払いになっているか、それとも多重債務者の収入等から判断して、毎月の収入からみてそれほど無理をしなくても支払える場合は任意整理を選びますが、それを超える弁済を強いることになりそうな場合は、支払わないことにして自己破産申立を選択します。
ここでは任意整理の方法について説明します。
まず相談者から委任を受け、受任通知を業者に出します。通知の内容は相談者のそれまでの取引履歴の開示を求めます。
取引履歴の開示があった後は、利息制限法による計算方法で行います。その方法とは、利息制限法の利率を超えて支払っている利息部分を、元本に充当して計算します。
○元本がなくなって且つ払いすぎになっている場合は、払い過ぎた額の返還を求めます。これを過払い金返還請求と言います。
○充当計算をしてもまだ元本が残る場合(利息制限法で計算しているので元本が相当少なくなっている例が多いようです。)は、払える額での分割交渉を行います。払える額とは、毎月の収入からみてそれほど無理をしなくても支払える額を、残金が残っている業者に少しずつ払えるように按分して決めます。
弁護士が介入した場合は、合意ができた以降の利息は免除してもらえることが多いです。分割の回数は最大で60回を目安にしています。勿論残額が少ない場合はもっと回数は少なくなります。利息がつかないので長期間でもそれほど心配しなくてもよいように思います。
   
【多重債務で且つ収入から見て支払って行けないと思うのですが、何か方法はあるでしょうか?】
個人であれば自己破産申立をすることをお勧めします。
自己破産申立をお勧めするのは、この手続きの最後で免責を受けることができるからです。免責とはそれまでのすべての借金が免除される、即ち責任が免責されることをいいます。
免責制度は、その人に借金をいつまでも残すと、その人はいつまでたっても再起できないので、借金の負担をなくして新しい人生を再スタートさせてやるための制度です。
罪を犯した場合でも普通1度は執行猶予がつくのですから、免責によって支払を受けられなくなる債権者に迷惑を掛けることになりますが、1度は許してもらえるという制度だと理解していいのではないでしょうか。

会社では免責という制度はありません。
しかし、会社の場合でも、月々の支払が困難となって事業を続けられなくなった場合、そのまま夜逃げしてしまうのではなく、会社の従業員や取引先などの債権者に掛ける迷惑を最小限に抑えるために、自己破産申立を選択すべきことは、会社を経営していた者としての責務だと思います。
そして、経営者は、大抵会社の債務の連帯保証人となっていますので、会社と共に、経営者も自己破産を申し立て、経営者は免責を受けると言うのがとるべき途だと思います。 

自己破産のほかに、個人民事再生という手続きもあるのですが、支払えなくなった人に、支払を以前よりは軽減させるとしても支払わせる手続きですから、私は特別な場合以外はお勧めしておりません。人生を新たにやり直すには、免責のある自己破産の制度の方がより優れていると考えるからです。
私の経験では、自己破産後免責を受けても、その人が立ち直り人生を再出発させることができるのは1~2年はかかるように思いますので、免責を受けてもそうですから、支払うことを求められる個人民事再生手続は、できたら選択しないほうがよいと思っております。
個人民事再生手続を選択する特別な場合とは、免責が受けられない事情にある人(借金ができた原因のほとんどがギャンブルや浪費である場合など)の場合とか、担保オーバー(住宅の価値よりローンの額の方が大きい)の住宅ローンがある場合で、住宅を手放さずに、ローンを支払い且つその他の債権者にも以前よりは軽減された支払いを続けることができる人の場合です。
   
 
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